PTB 回収問題について「PTB有識者メッセージVol.6」

一般社団法人パチンコ・トラスティ・ボード(PTB)は9月5日までに、PTB有識者メッセージ第6弾を発表した。PTB有識者懇談会(有識者8名で構成)の座長・和田裕氏(通産省の元キャリア官僚)は、パチンコ産業の健全な発展を見据え、今回第6回目となる「型式試験に合格したパチンコ機と性能が異なる可能性のあるパチンコ遊技機」問題についてメッセージを発信。今回の回収撤去の事態について検討をおこない、釈然としない点が残るものの、大衆のささやかな健全な娯楽としての姿に立ち返るために、ヘビーユーザー依存体質が払拭される方向に強い期待をおいた。

PTBは、パチンコホール経営企業の第三者監視機関として2005年2月に設立し 、同年4月から始動。評価委員会を中心に会計研究部会、評価基準検討部会などが編成されている。有識者懇談会・パチンコ懇談会も平行して機能させ、あるべき健全なパチンコ産業像についての提言を行なっている。

有識者懇談会からのメッセージ【Vol.6】
■「型式試験に合格したパチンコ機と性能が異なる可能性のあるパチンコ機」問題について(出荷の時点で)

パチンコについては、パチンコ遊技機の釘問題に端を発して、この所、一般のメディアでも取り上げられています。法律上、パチンコホールには、出玉性能等について試験を受けたうえ各都道府県の公安委員会から検定を受けた型式の遊技機しか設置できないこととなっていますが、警察庁からの要請を受け、(一般社団法人)遊技産業健全化推進機構が2015年6月1日より、全国のパチンコホールで調査をした結果、試験を受け検定を受けたものと出玉性能が異なる遊技機が、多数見つかりました。これを踏まえて、パチンコホール営業を所管する警察庁は、このような遊技機を、「検定機と性能が異なる可能性のあるぱちんこ遊技機」として、自主的に撤去するよう指導しています。

このような一連の動きについて、当懇談会として検討した結果、仮にこのパチンコホールで起きた事態が、関連する風適法や民法等で違法と認定された場合とそうでない場合に、どのような法的責任が発生するかをめぐって、以下のような認識に至りましたので、ここに提言することと致します。

1 警察庁の基本的立場
警察庁は、「検定機と性能が異なる可能性があるぱちんこ遊技機」といっている。「・・・性能が異なるぱちんこ遊技機」とはいっていない。また(ぱちんこ遊技機メーカー団体組織)日工組も「『遊技くぎ』の変更により性能が異なる可能性がある型式遊技機」といっており、「・・・性能が異なる型式遊技機」とはいっていない。
これは、
・出荷時点で、個々の遊技機が検定機と異なっているか否か
・異なっているとして、「『著しく客の射幸心をそそるおそれがあるものとして国家公安委員会規則に定める基準』に該当する違法な遊技機とされる」(風適法4条4項)に該当するか否かについて判断しないということであり、これは違法性の有無を判断しない(うやむやにしておく)ということではないか?今回のような事象が生じたのは、どこに原因があったのかを明確にしなければ、再発防止策が出来ないのではないか?

2 現実の動きは、違法性はうやむやにしたままで、実設置台数294万台中、約73万台(約4分の1)を『自主的に』撤去するという、重大事態になっている。その結果、ホール企業の責めに帰すべきでないケースでも、メーカーに対して、損害賠償の請求ができず、『自主』撤去・入替えにかかるホールのコスト負担が、最終的には、ユーザーにかかることとなっている。

3 仮に、違法とされた場合の法的責任
仮に、「検定機と性能が異なるぱちんこ遊技機」として、違法性がありと判断されたとしますと、以下のような責任問題が発生することとなろう。
(1)メーカーの責任として考えられるもの
①行政処分等:風適法違反による。
・型式の検定取消(検定の不正取得による)
その結果、同型式の全機を撤去することとなる。
・(実質的な)メーカーの責任履行の欠格事由ということで、
メーカーは、5年間検定申請不可となる。
②対ホールの民事責任:売主責任
・債務不履行
その結果、機器の売買契約の解除+返金、更に損害が発生していれば、その賠償義務発生となる。
(2)ホールの責任として考えられるもの
①行政処分:風適法違反による。
・「『著しく客の射幸心をそそるおそれがあるものとして国家公安委員会規則に定める基準』に該当する違法な遊技機とされる」
その結果、基準期間3カ月の営業停止となる。
②対ユーザーの民事責任:遊技約款、契約違反
・債務不履行
その結果、契約解除+返金、更に損害賠償となる。

4 結論
メーカーは、対象機種の下取り等の優遇措置をとるとしているが、下取り価格はメーカーの任意である上、下取り価格を代替機種の販売価格に上乗せすることによって、事実上、何らの負担も負わず、自主撤去による代替品売上げ「特需」の利益にあずかることさえできる。また代替機種の販売に際してはホール側に無用な機器まで売り付ける「抱き合わせ販売」の横行も憂慮される。

その結果、最終的に、ホール、更には消費者たるユーザーが、自主撤去の経済的負担を担うことになる。そして、今回の一連の経緯を生んだ、著しく射幸心をそそるおそれのある遊技機を排除するという行政の目的は必要と理解出来るが、今の風適法の検定認定制度全般に、構造的な問題が内包されているのではないか?と感じられる。

このような状況に対して、ホール業界として一体となって取り組まなければ、業界の健全な発展は望めないのではないかと考えざるを得ない。当懇談会としては、かかる不正と不公平がまかり通る可能性がある事態を憂い、警察当局及び公正取引委員会等の関係省庁に、十分な監視と指導を期待するものである。

さて、その一方で、
1.今後、メーカーは、高射幸性遊技機を作らず、検定の厳格実施を行うと共に、出荷時の検査を徹底実施する。
2.ホールはメーカーからの遊技機の受入れの際に、納入検査を厳格に行なうとともに、くぎの調整など、ヘビーユーザーに迎合するような遊技機性能の実質的な変更を一切やめる。

このような2点を、今後、厳格かつ徹底して実施していくことにより、ヘビーユーザー依存体質が払拭される方向は、当懇談会としても、強く期待していることを申し添える。

かくして、パチンコ業界は、大衆のささやかな健全な娯楽としての姿に、立ち返ることとなろう。

今回の措置について、当懇談会としては、完全には納得できない所があるが、これをきっかけに、より望ましい方向に進むことを、強く期待する。

以上
平成28年9月吉日
一般社団法人パチンコ・トラスティ・ボード有識者懇談会委員