横浜市(林文子市長)は12月20日、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)への理解を深めてもらおうと、「横浜IRを考えるシンポジウム」をウェブ開催した。
横浜市は2020年3月6日〜4月6日、「横浜IR(統合型リゾート)の方向性(素案)」を作成、パブリックコメントを実施した。その結果、延べ 5040人・団体から、9509件の意見が寄せられた。この意見などを受け、横浜市が実現を目指しているIRの意義や、「ギャンブル等依存症」と「治安」など、IRを構成する施設の一つであるカジノに起因する懸念事項対策の取組みについて、市民に理解を深めてもらう事を目的として開催されたもの。なお、新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から無観客形式で、特別講演及び基調講演は事前収録したものを、そしてパネルディスカッションはライブ形式により、YouTube専用サイトにおいて配信。視聴カウントは約150(ピーク時)だった。
まず、主催者を代表して平原敏英副市長(横浜市)は、「カジノを含む統合型リゾート(IR)」を誘致する意義を述べた。引き続き、カジノやギャンブルの社会経済的影響に関する世界トップクラスの専門家と称されるダグラス・M.ウォーカー教授(米国チャールストン大学経済学部)により、特別講演「日本におけるカジノを含むIR(統合型ゾート):横浜の考察」と題する特別講演(約40分)を行った。同教授は、経済効果はもとより、依存症や治安に対してエビデンスに基づいた理解が必要と述べていた。
続いて、シンガポールの国家依存症管理サービス機構(NAMS)、精神科医であるゴマシナヤガン・カンダサミ氏が「シンガポールにおけるギャンブル依存症の対策及びその効果」と題して基調講演(約50分)した。シンガポールは、初めて、「カジノを含む統合型リゾート(IR)」というイメージ戦略を打ち出し、2005年にカジノ解禁を決定。2010年にホテルや商業施設を備えたIR2カ所を開業。依存の封じ込めでは、専門機関による様々な対策を講じている事を述べた。特に、カジノ以外のネットギャンブルについても規制強化している事、カジノ入場料を当初より倍増させ規制している事などを伝えた。
午後2時50分からは、ライブにより、「ギャンブル等依存症対策の現状と課題」と題したパネルディスカッションを行った(約50分)。厚労省がギャンブル等依存症治療の保険の適用対象とした「集団治療プログラム」に取り組んだ久里浜医療センターの松下幸生副院長(副院長)が司会進行した。この「集団治療プログラム」の臨床心理士である三原聡子氏、基調講演したゴマシナヤガン・カンダサミ氏(NAMS精神科医)、ギャンブル等依存症を脳の反応を通じて研究する東京医科歯科大学大学院の橋英彦教授、自らギャンブル依存症になり現在は回復施設グレイス・ロード甲斐サポートセンター(山梨県)の池田文隆センター長がパネラーとなり、持論を展開した。
最後に「治安等対策の現状と課題」と題してパネルディスカッション(約50分)を開催。政府のIR推進会議の有識者会議の委員の一人、渡邉雅之弁護士(三宅法律事務所)が司会進行役となり、治安対策に精通、地元横浜市出身で元岩手県警本部長の三枝守氏、米国ネバダ大学ラスベガス校でカジノ法制度に詳しいアンソニー・キャボット客員教授がパネラーとして、反社会的勢力の排除、資金洗浄の抑止について、IR法の取り組みを説明した。
横浜市は12月11日、カジノを含む統合型リゾート(IR)の誘致に向け、IR施設の概要や事業者の役割などを示した「実施方針案」を公表している。さらに政府は12月18日、カジノを含む統合型リゾート(IR)推進本部会合を開き、自治体から整備計画の申請を受け付ける期間を2021年10月1日から2022年4月28日までとする事などを盛り込んだ基本方針を発表している。