国会 IR推進法案成立

IR推進法案(一部修正案)は12月15日1時、衆議院本会議で採決され、賛成多数で可決成立した。12月13日20時頃、参議院内閣委員会でIR推進法案、16項目の付帯決議、そして一部修正案が採決。翌14日、参議院本会議採択を受けていた。これにより政府に内閣総理大臣を本部長とするIR推進本部が設置され、1年以内に政府はIR実施法案まとめ国会に提出する。

付帯決議には、ギャンブル依存症対策を強く盛り込むとともに、マネーロンダリングへの抑止強化に向けた1項目が加えられた。特に、ギャンブル依存症対策については「遊技」(パチンコ)を加えた内容となり「カジノに留まらず他のギャンブル、遊技等に起因する依存症を含めギャンブル等依存症対策に関する国の取り組みを根本的に強化するため、ギャンブル等依存症に総合的に対処するための仕組み、体制を設けるとともに、関係省庁が十分連携して包括的な取組みを構築し、強化すること。またこのために、十分な予算を確保すること」とした。

【一部修正案】
・第10条(政府に求める必要な措置)「カジノ施設を利用したことに伴い悪影響をうける防止するための必要な措置」において「ギャンブル依存症等の防止」を明示
・付則に追加/「この法案の規定(IR推進法)及び第五条の規定に基づく措置(IR実施法)については、この法律の施行後5年以内を目途として、必要な見直しが行われるべきものとすること」

【付帯決議】(衆議院の付帯決議に加え参議院決議で加えられた部分は『』)
1.特定複合観光施設区域の整備を推進にあたっては、特にカジノ施設の設置及び運営に伴う有害な影響を排除する観点、我が国の伝統文化・芸術を活かした日本らしい国際競争力の高い魅力ある観光資源を整備する観点、並びにそれらを通じた観光及び地域経済の振興に寄与する観点に特に留意すること。
2.政府は、法第5条に基づき必要となる法制上の措置を講ずるにあたり、特定複合観光施設区域の整備の推進の目的の公益性、運営主体の性格、収益の扱い、射幸性の程度、運営主体の廉潔性、運営主体の公的管理・監督、運営主体の財政的健全性、副次的弊害の防止等の観点から、刑法の賭博に関する法制との整合性が図られるよう十分な検討を行うこと。
3.特定複合観光施設区域に関しては、国際的・全国的な視点から真に観光及び地域経済の振興の効果を十分に発揮できる規模のものとし、『その際、特定複合観光施設全体に占めるカジノ施設規模に上限等を設けるとともに、あくまで一体としての特定複合観光施設区域の整備が主眼であることを明確にすること。』
4.特定複合観光施設区域の数については、我が国の複合観光施設としての国際的競争力の観点及びギャンブル等依存症予防等の観点から厳格に少数に限ることとし、区域認定数の上限を法定すること。
5.地方公共団体が特定複合観光施設区域の認定申請を行うにあたっては、公営競技の法制にならい、地方議会の同意を要件とすること。『また、地方公共団体の公聴会の開催など、地域の合意形成に向けた具体的なアクションや依存症や、治安維持などの地域対策を国の認定にあたっては十分に踏まえること。』
6.特定複合観光施設区域の整備が真に観光及び地域経済の振興に寄与するため、また、特定複合観光施設の設置の前提として、犯罪防止、治安維持、青少年の健全育成、依存症防止等の観点から問題を生じさせないようにするため、特定複合観光施設区域の整備の推進における地方公共団体の役割を明確化するよう検討すること。
7.カジノ施設の設置及び運営をしようとする者その他カジノ施設関係者については、真に適確な者のみが選定されるよう、厳格な要件を設けると共に、その適合性について徹底的した調査を行うことができるよう法制上の措置を講ずること。また、カジノ施設を含む特定複合観光施設全体の健全な運営等を確保するため、事業主体としての一体性及び事業価値等の廉潔性が確保されるよう法制上の措置を講ずること。
8.依存症予防等の観点から、カジノには厳格な入場規制を導入すること。その際、『自己排除、家族排除プログラム導入、入場料の徴収など』諸外国におけるカジノ入場規制のあり方やその実効性等を十分考慮し、我が国にふさわしい清廉なカジノ運営に資する法制上の措置を講ずること。
9.入場規制の制度設計にあたっては、個人情報の保護との調整を図りつつ、個人番号カード(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律第2条第7項に定める個人番号カード)の活用を検討すること。
10.ギャンブル等依存症患者への対策を抜本的に強化すること。我が国におけるギャンブル等依存症の実態把握のための体制を整備し、『その原因を把握分析』すると共に、ギャンブル等依存症患者の相談体制や臨床医療体制を強化すること。加えて、ギャンブル等依存症に関する教育上の取り組みを整備すること。また、カジノに留まらず他のギャンブル、『遊技』等に起因する依存症を含め『ギャンブル等依存症対策に関する国の取り組みを根本的に強化するため、ギャンブル等依存症に総合的に対処するための仕組み、体制を設けるとともに、』関係省庁が十分連携して包括的な取組みを構築し、強化すること。『また、このために十分な予算を確保すること。』
11.法第9条及び法第10条に定める各種規制等の検討にあたっては、諸外国におけるカジノ規制の現状等を十分踏まえると共に、犯罪防止、治安維持、青少年の健全育成、依存症防止等の観点から問題を生じさせないよう、世界最高水準の厳格なカジノ営業規制を構築すること。『なお、諸外国におけるいわゆるジャンケットの取扱いについては、極めて慎重に検討をおこなうこと。』
『12.カジノにおけるマネーロンダリングの防止を徹底する観点から、第7項の事業主体の廉潔性を確保するための措置、第8、第9項のカジノへの厳格な入道規制を導入するための措置、第11項の世界最高水準の厳格なカジノ営業規制を構築するための措置に加え、マネーロンダリング対策に関する国際基準である「FATF勧告」に適切に対応するため、諸外国規制の現状等を踏まえつつ、カジノでの顧客の取引時の確認、確認記録の確認保存、疑わしい取引の届け出等の罰則を含む、必要かつ厳格な措置を講ずること。またカジノにおけるマネーロンダリングの防止を徹底する観点から厳格な税の執行を確保すること。』
13.カジノ管理委員会は独立した強い権限を持ついわゆる「三条委員会」として設置し、カジノ管理委員会がカジノの営業規制を厳格に施行できる体制の構築が不可欠であり、特にカジノ導入時から厳格な規制を執行できるよう十分な機構定員を措置すると共に、適切な人材を配置するほか、厳格なカジノ営業規制等や関係事業者に対する行政処分等の監督を有効に執行できる人材育成のあり方も検討すること。また、特定複合観光施設の設置の前提として、犯罪防止、治安維持、青少年の健全育成、依存症防止等の観点から問題を生じさせないようにするため、都道府県警察その他関係機関の必要な体制を確保すると共に、カジノ管理委員会とこれらの関係機関の連携体制を確保すること。
14.カジノの運営主体が民間事業者になることに鑑み、カジノ事業者に適用される税制・会計規則等につき、諸外国の制度を十分に勘案の上検討を行うこと。
15.法第12条に定める納付金を徴収することとする場合は、その使途は法第1条に定める特定複合観光施設区域の整備の推進の目的と整合するものとすると共に、社会福祉、文化・芸術の振興等の公益のためにも充てることを検討すること。また、その制度設計にあたっては、依存症対策の実施をはじめ、法第10条に定める必要な措置の実施『や、周辺地方公共団体等』に十分に配慮した検討を行うこと。
16.以上を含め、法第5条に定める必要となる法制上の措置の検討にあたっては、十分に国民的な議論を尽くすこと。