3月8日10時50分、衆議院内閣委員会において高井崇志衆議院議員(民進党・無所属クラブ) は、「検定機と性能が異なる可能性のあるぱちんこ遊技機」の回収撤去の結果などについて質問に立った。答弁には松本純国家公安委員会委員長、山下史雄生活安全局長(警察庁)が立った。高井議員は、昨年4月27日で取り上げた回収撤去の結果と原因について問うた。また、モニタリング装置(役比モニタ)装着の義務化、また特許料の一部をギャンブル等依存症対策費へ拠出すべき等を求めた。
【質問】(要旨)
■高井議員(以下、敬称略) パチンコ・パチスロの依存症対策について質問したい。厚労省は536万人という推計を出したが、その内訳は定かとなっていない。警察庁で昨年検挙した刑法犯の内、パチンコが原因とした検挙者は1326件。競輪・競馬等は999件、パチンコは1.3倍高い。パチンコは遊技でありギャンブルではないという建前論だが、これだけ(IR法案の審議等)関心が高まっており、ギャンブル等依存症対策についてどう取り組むか。
■松本国家公安委員長(以下、敬称略) パチンコ営業は、風営適正化法の下、必要な規制が行われている。IR推進法の審議において、同法付帯決議でぱちんこ等含むギャンブル等依存症への対策が言及されたところ。昨年末、ギャンブル等依存症対策関係閣僚会議が開催し、幅広く包括的な対策推進の方針を決定した。警察と致しましてはパチンコ営業について様々な意見を踏まえつつ、関係省庁とも連携して必要な対策を、より一層取り組んで参る。
■高井 ギャンブル依存症の原因となっているのは、射幸性の高い不正な改造機が出回っていた事。昨年4月に質問したサンプル調査(遊技機性能調査)の結果を踏まえ、当時の河野国家公安委員長は、私の期待以上となる早急で厳正な対処を答弁いただいた。昨年11月あらためて不正改造機の撤去状況について質問をしたが、現在、どういう状況でどう確認したのか。
■山下生活安全局長(以下、敬称略) 昨年末、業界をあげて対象遊技機は回収されたと承知している。メーカー団体によれば、約73万台、99.9%以上が撤去回収され、未だパチンコ店にある対象遊技機は、引き続き全力をあげているとの報告を受けている。警察では、各パチンコ店に対して立入を実施しており、未撤去機を確認した場合は、撤去を指導する事となる。
■高井 質問主意書など含め、再三質問してきたが、警察庁は早急な対策をとらなかったように感じるが、具体的な対策・措置をしなかった理由は何か。
■山下局長 対象遊技機の撤去回収を優先したものであり、現在、目途がついたところから、各パチンコメーカーから報告を求めるなど、対象遊技機の原因等あらためて調査している。
■高井 サンプル調査をみると、設置されていた291万台全てが怪しかったのではないか。遊技機は30〜40万円とすると1兆円規模の不正だったのではないか。行政がそれを見逃していたのか。政治決断で、こうした不正が行われた原因追求を行うべき。
■松本委員長 現在「検定機と性能が異なる可能性のあるぱちんこ遊技機」が出荷された原因等の調査を行っており、結果についてしっかり確認する。
■高井 しっかりけじめをつけて欲しい。今回の回収撤去において、メーカー、パチンコ店それぞれ責任があろうが、どのような罰則があるのか。
■山下局長 パチンコメーカーが検定を受けた型式に属さない遊技機を、検定を受けた型式に属する遊技機として販売した場合等は、検定取消の対象となるものの、風営適正化法では罰則の対象とはならない。パチンコ店において、営業の用に供している遊技機が検定機と異なり、著しく射幸性をそそるおそれのある遊技機に該当するものであれば、風営適正化法に違反するところとなり、行政処分の対象となるものの、風営適正化法上の罰則の対象となるものではない。
■高井 検定取消あるいは営業停止は重い措置だが、そうなっていない。諸外国の例を見ると、シンガポールのカジノでは、不正改造営業していたなら、軽い場合で8000万円の課徴金、重ければ売上の10%課徴金がある。罰則が無い我が国は、規制が緩いのではないか。私は、メーカー側がまったく無罪放免であり、撤去もパチンコ店側がかなりの費用を持ちだして撤去されたように思われ、不公平だと思っている。メーカーに対してしっかり指導いただきたい。
■松本委員長 本年1月メーカー団体を含む遊技業界14団体は、パチンコへの依存防止対策について、最優先課題で取り組んで行く旨を表明したところ。パチンコメーカーにあっても責任をもって、取り組んでいただけるものと受け止めている。
■高井 厳しい姿勢で、厳格にお願いしたい。再発防止について質問したい。パチンコ遊技機の性能を確認する方法として、簡単に判別する方法としてモニタリング装置(役比モニタ)があるが、パチスロは義務づけたそうだが、モニタリング装置をパチンコについても、しっかり義務づけ、制度化すべきではないか。
■松本委員長 依存問題について警察では、問題として指摘されている事を踏まえ、依存防止対策等の指導を行っている。ご指摘の点は、「射幸性の抑制の観点から出玉の性能が容易に確認でき、射幸性が過度に高まることを防止することができる遊技機」等の開発・普及をすすめるよう業界団体に指導しているところ。現在、パチンコ業界団体におきましても、その実現に向けて取り組みが進められているところから、警察としては、状況についてしっかり確認してまいりたい。
■高井 パチスロ業界で自主的に進めている話であり、是非取り組んでいただきたい。パチスロの問題に移ります。パチスロでも射幸性の高い遊技機が出回っていると現実がある。サブ基板のある遊技機について、それを高射幸性遊技機と指定して自主撤去を進めていると聞いている。しかし、サブ基板の構造上の問題があるからであり、こうした点から、対象機の認定は認めるべきではないと思う。もう一つ、業界の自主撤去にとらわれず、迅速に撤去するよう指導すべきと思う。
■山下局長 遊技機の認定および型式の検定等における規則については、主基板でない周辺基板について、遊技の結果に影響を及ぼす場合、都道府県公安委員会の認定を受ける事はできないと考えられる。高射幸性の遊技機の撤去の件ですが、業界団体は平成27年6月設置比率を下げる目標を定めて取り組んでいる。平成28年12月1日時点で50%以下になるよう目標を定め、実際には39.1%だったと報告を受けている。
■高井 検定規則と特許制度との関係について質問したい。検定規則に定める技術基準を満たした遊技機を開発し、型式に関する検定を取得しなければならない。しかし、検定規則の技術基準を満たした遊技機を開発製造しようとすると、回避できない特許が多数あるようだ。この特許に対して、メーカー間ではパテントプールを構成して会員相互にライセンスし、特許料を徴収する仕組みを構築しているようだ。巨額のライセンス料が発生している。行政として、巨額のライセンス料が生じるような基準を作るという事は、特定の企業を優遇するようにも見えるが、いかがか。
■山下局長 特定の特許を前提として規則ができたものではない。仮に、規格を満たすために特定の特許が利用されているとしても、企業が特定の特許を利用する事や、一定の特許権の設定登録等については、当庁としてはコメントする立場にない。
■高井 規制の事情で強制的に使わざるを得ない特許権について、ライセンス料(例えば120億円の巨額)が、特許を持つ民間企業の利益にするというのは、不適当ではないかと感じる。その一定の割合を、例えばギャンブル依存症対策、のめり込み対策等活用してもいいのではないか。
■山下局長 先ほどと同じくコメントする立場にない。現在パチンコ業界では、依存防止対策等に様々な取り組みが進められているものと承知している。当該取り組みに要する費用については、業界において自主的に判断されるものと承知している。
■高井 この(回収撤去)問題かなり進んだと思っている。パチンコ業界では、痛みを伴った方もいらっしゃると思うが、同じ業界の中でもやって良かったという声もいただいている。これはギャンブル依存症対策のかなり重要なテーマだと思っている。大臣のリーダーシップに期待している。
※写真は衆議院インターネット審議中継より