大阪府・大阪市のIR推進局は8月8日、大阪大学中之島センター(大阪市北区)において、ギャンブル等依存症予防セミナーを開催し、約100名の参加があった。講師は、小林桜児氏(神奈川県立病院機構・同精神医療センター医療局長)が務め、依存症発症予防のためには、まず依存症に関する知識と理解が不可欠として、様々な依存症がある事に理解を深めた。
ギャンブル等依存症対策基本法は、7月6日に参議院で可決成立し、同13日に公布。そしてIR実施法(特定複合観光施設区域整備法)は、7月20日可決成立し、同27日に公布した。こうした流れを受けて、大阪府・市は、夢洲地区へのIR誘致に向けた取組みを進めており、自治体として名乗りを上げる前提としてギャンブル等依存症対策を進めたもの。今年度のIRセミナー第3(8月1日)、4回(9月5日)では「ギャンブル等依存症の本質とその対策」として西村直之氏を講師に招いて開催する一方、今回第1回となるギャンブル等依存症予防セミナーとなった。
IR推進局の金森佳津理事によると、「皆様の中では、IR推進局が依存症についてセミナーを開く事に違和感を感じておられるかもしれません。公衆衛生を担当している部局、機関、病院等、きっちり連携して共同開催しました」と挨拶。その後、大阪府・大阪市のギャンブル等依存症への取組みを説明した。ギャンブル等依存症対策基本法では、自治体の責務が盛り込まれており、相談・治療・回復支援について切れ目のない体制を整備する取組みを説明した。(1)治療体制の強化(2)相談支援体制の強化(3)普及啓発の強化、という「依存症対策強化事業」を進めている。特に「大阪アディクションセンター(AC)」のネットワークづくり、おおさか依存症土日ホットラインの開設等。そして依存症の予防に資する教 育・啓発活動の推進として、府内すべての高校3年生(319校、約9万人)にギャンブル等依存症対策リーフレットの配布、全国をリードする依存症対策としての大阪モデルの構築(依存症対策研究会の設置)を今年度よりスタートした事などを報告した。
小林氏の講演では「カゼを予防するため、手洗い・うがいを励行しましょうというような具合にはいかないのが依存症です。それだけ複雑なものである事を理解して欲しい」と、依存症はまだ未解明の部分が多く、なぜなるのか、そしてどうやって治すのか、については基礎研究段階でも未解明の部分が多いとした。講演後は参加者からの質疑の時間を設けた。その中で「IR(カジノ)推進する大阪府・市のギャンブル依存症が増えるのがわかっているのに依存症予防というセミナー、このテーマで引き受けた理由が知りたい」という問いがあった。「依存症を知っていただく機会だからです。依存症というものは医学部の科目にもなく、一般の方々にはさらに知られていない。昨今のIRによって依存症というものの関心が急に高まった今こそ、ぜひとも依存症について知っていただきたい」と開催意義を説明した。