大門雅弘課長補佐(警察庁)は4月17日に開催した「依存(のめり込み)問題・置引き防止対策等研修会」の席上、講話を行い、のめり込み対策、置引き防止、遊技の低射幸化など業界挙げた取組みに期待した。
この研修会では、依存問題PT兼WGリーダーの安藤博文氏による「のめり込み問題と対策、ガイドライン策定のねらいと概要」、自己申告プログラム検討会リーダー・茂木欣人氏による「自己申告プルグラム導入のねらいと概要」、全日遊連の西俊文事務局長による「ホールにおける置引きの発生状況とその対策」、日工組の金沢全求理事長による「これからの遊技機開発に関する取組み」、回胴遊商の山崎智成副理事長による「闇スロ撲滅への取組み」の説明があった。
【講話・要旨】
皆様方におかれましては、平素より警察行政各般にわたりまして深いご理解とご協力を賜っており、この場をかりて御礼申し上げます。引き続きどうぞよろしくお願いします。
本日の研修会において時間をいただきましたので、研修会の内容について何点か、お話したい。
業界では、パチンコ遊技へののめり込み問題対策について、ぱちんこ依存問題相談機関・認定特定非営利活動法人リカバリーサポート・ネットワークへの支援をはじめとして、児童の車内放置防止マニュアル、のめり込み防止の広報・啓発活動など、様々に取り組みを進められているところ。しかしながら、のめり込みに起因すると思われる各種問題が後を絶たない状況にある。さらに昨年、通称IR法案と呼ばれる特定複合型観光施設区域の整備の推進に関する法律案が国会で審議された中で、パチンコ遊技における遊技客の依存、これが問題として取り上げられた他、ギャンブル依存の疑いのある方が536万人と推計された厚生労働省の研究班の調査対象にパチンコも含んだ数値として公表されるなど、パチンコに対する社会的な関心というものは、これまで以上に強まっている。
このような状況の中、昨年8月、業界関係団体14団体が集まるパチンコパチスロ産業21世紀会は、業界全体としてのめり込み対策を強化する方針を決議し、新たにのめり込み問題に特化したワーキンググループを立ち上げ、実施可能な対策から随時スタートさせるという形で、取り組まれてきたことを承知している。
本日の研修会においては、依存問題対策ガイドラインをはじめとする各種対策の説明や今後のさらなる取り組みについての現状報告があると思うが、このような形で広く営業者の方に周知される機会が設けられたこと、まずもって皆様のご努力に敬意を払いたい。
一方で、この業界挙げた取り組みは、まだ始まったばかり。策定されたガイドラインをしっかりと運用することはもとより、必要とあればさらに実践的なもの、効果的なものに改定する努力も重要と思う。
この業界の取り組みの目的は、のめり込んだ人がかかえる問題解決に寄与すること。その家族をはじめとする関係者の方々の理解を得ることと承知している。この実現にはガイドラインごとに、今後どのように現場で運用されるかに、かかっている。
その意味でホールの現場に携わる店長や従業員の皆様のご理解とご努力が不可欠であると考える。ホール経営者の方々におかれては、その点に留意の上、各店舗の指導高揚をお願いするとともに、この研修会を皮切りとして、全国各地でも周知徹底の場がはじまることを期待している。
また、業界のさらなるのめり込み対策として、少額で遊べる遊技や、短時間でゲームが終了するような、止め時のわかりやすい遊技をはじめとする射幸性の低い遊技の創出を検討していただいていると承知している。メーカー団体からもそのような遊技機開発の取り組みに関してこの後、説明があろうと思うが、これらの遊技機が実際にホールに設置され、遊技客に対してその遊技の手軽さ、遊びやすさなどを体感していただくためには、ホールの皆様のご理解、ご協力なくして成しうるものではありません。
販売促進に資する斬新な施策や有効な営業戦略の構築等、メーカーホールともに創意工夫を凝らし、都道府県単位や、企業単位においても実効性のある方策を検討するなど、あらゆる点から実現に向けたアプローチを期待している。もちろんその際には、風営法の各種規制を厳格に遵守するということは十分留意された上で、遊技の低射幸化を実現していただきたい。
また、のめり込み問題の一つである、児童の車内放置事案、これにつきましてもこの場を借りて苦言させていただく。皆様にご努力いただいている巡回活動等によりまして、例年数十件の児童の発見事案が継続している。このことからすると、まだまだ予断を許さない状況が続いていると思われる。
皆様におかれましては、示されている業務マニュアルが店舗において正しく実行されているか、その確認することはもとより、さらなる対策として、児童を同乗している車両は営業する駐車場への入場を断るなど厳格な措置を積極的に推進していただきたい。
最後に、ホールにおける置引き対策について。置引きの全体の認知件数が減少傾向にある中で、パチンコ店における置引きの認知件数だけが、顕著に増加していることなどから、様々な機会を通じて置引き対策の推進についてお願いしてきた。依然としてパチンコ店での置引きの発生件数は高水準で推移している。業界においては新たなファン層を拡大しようと様々な取り組みが行われている。そもそも遊技客に来てもらうべき遊技場が置引き被害に遭う確率が高いという場所であるならば、どのような取り組みをしようとも、その成果は表れないのではないか。安全で安心な遊技場所を確保することは、パチンコが健全な娯楽であるための大前提であるとともに、遊技客に手軽に遊んでもらうための必要不可欠な条件であると考えている。
本年3月業界団体において、置引きマニュアルの第1版を策定いただいた。後ほどこの説明があると思うが、依存問題対応ガイドラインと同様に現場に即したマニュアルとして今後さらに改訂をしていく必要があるものと承知している。皆様にありましては、マニュアルを参考にしていただき、個々のホール現場でどのような発生事案があるのか、実例をもとに分析をした上で、その対策を検討していただき、真に実効的な防止対策を実行していただきたい。
例えば、あるホールにおいて遊技客が遊技台の確保のために、携行品を座席に放置しておくことが、置引きの主な原因であるというのであれば、遊技客への呼びかけに留まるだけでなく、座席の確保のために、目印になるものを店側で準備することで、遊技客が携行品を放置することのないようにするなど、具体的に結果に結びつく対策をお願いしたい。
以上、パチンコ遊技ののめり込み問題対策と置引き対策についてお話させていただいた。今後のパチンコ業界の皆様のご努力とその結果に期待しています。