公益財団法人 日工組社会安全研究財団(椎橋隆幸会長)はこのほど、「パチンコ・パチスロ遊技障害 研究成果 研究成果 最終報告書」(企画・編集/パチンコ・パチスロ遊技障害研究会)を発表した。
社安研は、パチンコ・パチスロへの過度ののめり込み(パチンコ・パチスロ遊技障害)の実態解明・予防・低減に資する事を目的として、平成25年より精神医学・脳科学・心理学・社会学を専門とする領域横断的な研究者で構成する「パチンコ依存問題研究会」を発足させた。平成29年12月より「パチンコ・パチスロ遊技障害研究会」として名称を変更し研究を続けた。全国調査など行い、このほど研究成果をまとめ、最終報告書化したもの。同報告書は、A4サイズ80頁余の冊子。「ギャンブリング問題のとらえ方の変化と進むべき方向性について」という第1章から、「なぜパチンコ・パチスロ遊技障害の研究が必要なのか」(第2章)、「全国の遊技人口および遊技者の実態」(第3章)、「パチンコ・パチスロ遊技障害尺度(PPDS)の開発とカットオフ値の設定」(第4章)、「遊技障害のおそれがある人はどの程度いるか」(第5章)、「障害の疑い該当者の性格的・心理的特徴と介入法」(第6章)、「予防・早期介入のために」(第7章)、「調査結果の総括と今後の研究への課題と展望」(第8章)の構成。社安研では、行政、回復施設、医療従事者、研究者、遊技関係者等に、施策や研究、予防・介入等に広く活用される事を願っているとした。本報告書はPDF版として、社安研ウェブサイトにて3月中の公開を予定している。
<調査報告書の概要>
本研究会は、まずパチンコ・パチスロの遊技障害の実態を把握するための尺度を開発するとともに、パチンコ・パチスロ遊技と遊技障害の実態把握に努めた。全国調査の結果、18〜79歳人口の内、最近1年間で遊技障害のうたがいのある人は約40万人と推計した。また、この全国調査の結果を分析したところ、「勝ち負けにかかわらず、自分で考えている金額の上限に達したら遊技を控える」「自由時間以外に遊技をしない」等遊技のあり方が、遊技障害のリスクを下げる事が明らかとなった。さらに研究会では、一定期間をおいて同じ人に調査を行う「パネル調査」を実施したところ、神経症傾向の性格特性を持っている事や、「遊技を自分でとめる事ができない」という固定した認識が遊技障害を持続させる事が明らかとなった。なお、ギャンブリングへの過度ののめり込み(ギャンブリング障害)は、海外の研究において臨床像が一枚岩ではない事が指摘されてきたが、国内のパネル調査でも、2タイプによる分類・把握が妥当であると結論付けた。これらの研究結果は、公共・医療セクター・遊技業界・自助グループ等における予防・介入策に役立つデータや知見を提供できたと考える。