日遊協 第31回総会における課長講話

一般社団法人 日本遊技関連事業協会(庄司孝輝会長)は6月18日、ハイアット・リージェンシー東京において、第31回通常総会を開催。新型コロナウイルス感染抑止につとめるため、警察庁の小堀龍一郎課長の講話は、事前に文書化されたものを当日配布し、講話とした。コロナ感染防止のための営業ガイドラインを徹底して欲しいと、なお一層の健全化を要請した。新たにセーフティーネットの対象となったこと、経過措置1年延長の件に触れ、前例ない危機(コロナ禍)を業界全体で乗り越える方途として、より信頼される業界となるようエールを送った。

【講話】警察庁生活安全局保安課 小堀龍一郎課長

 皆様方には、平素から警察行政の各般にわたり深い御理解と御協力を賜っているところであり、この場をお借りして御礼申し上げます。
 本年1月に保安課長に着任し、貴協会の総会で皆様とお会いできるのを楽しみにしていましたが、残念ながらそれが叶わず、書面にてご挨拶を申し上げます。

 今般の新型コロナウイルス感染症は、全世界に拡大し、多大な影響を与えましたが、ぱちんこ業界の皆様におかれましても、一個人として、また、一事業者として、今なお大変厳しい状況に置かれているものと思います。
 業界では先般、医療関係者に監修をいただき、感染予防のためのガイドラインを策定しました。これまでぱちんこ店では、クラスターが発生したという事実は聞いていませんが、万が一にでもそのような事態にならないよう、遊技客間の距離の確保、若しくは透明ビニールシート等による遮蔽、必要に応じた県外居住者の入場規制や混雑緩和のための稼働台数制限など、厳しい内容が盛り込まれています。既に全ての都道府県において休業要請が解除されましたが、ぱちんこホールの皆様におかれましては、是非、このガイドラインに沿って、あるいはそれ以上の工夫をして、お客と従業員の方々、そしてそのご家族の健康・命を守っていただきたいと思います。また、製造業者、販売業者等の皆様におかれましても、それぞれの業務に応じた感染症防止対策に万全を期していただき、心身ともに健康な状態を保って、この危機を乗り切っていただきたいと心から願っています。

 本日は、せっかくの機会ですので、ここ数か月で業界に起こったことと、これからのことについて、多少お話をさせていただきます。

 新型コロナウイルス感染症の感染が拡大して以降、既にご案内のとおり、今後の業界の在り方にも影響する幾つかの出来事がありました。
 まず、5月15日より、ぱちんこ営業が信用保証協会の保証の対象、政府系金融機関の支援の対象になりました。既に運用も始まり、多くの営業者から申請がなされていると聞いています。これは、業界にとって、長年の願いが成就されたものと認識しています。ただ、ここで誤解されてはいけないのは、今回これが認められたのは、単に新型コロナウイルス感染症の対応のためというわけではないことです。現に今回の措置は、時限の措置ではありません。では、なぜ認められたのか。ぱちんこ営業の射幸性が風営法でしっかりコントロールされていること、とりわけ先般の規則改正により射幸性が抑制されたことが、担当省庁である中小企業庁等から理解が得られたからです。言い換えれば、射幸性を抑えた中で、皆様がこれまで経営努力をし、今後もし続けるであろうことが正当に評価されたものとも言えます。是非、この点にご留意をいただければと思います。

 また、5月20日には国家公安委員会規則を改正し、旧規則機の撤去に係る経過措置期間を1年延長しました。これは、新型コロナウイルス感染症の影響により、新規則機への入替が困難となっており、また、入替作業等に伴う感染拡大の防止を図る観点から行ったものです。この改正前には、貴協会を含めた業界を代表する6団体から要望がありました。実際、改正に至る検討の過程では、業界団体の幹部の皆様と様々な議論をさせていただきました。遊技機の部材調達が困難化している等の業界内の事情がある一方で、社会一般の視点から、射幸性の抑制という命題が後退したと受け止められてはいけません。また、撤去期限がそのまま後ろ倒しになり、結局、経過措置期間満了間際になって撤去が集中する等の事態は避ける必要があります。このような問題意識を持ちつつ、この前例ない危機を業界全体で乗り越える方途として、経過措置期間を延長し、入替を分散化して計画的に行うため、今回の規則改正を行うこととしました。今回の改正は、いわば、業界団体による旧規則機撤去の取組に対する信頼をベースに行ったものであります。

 この点、先般、貴協会も加盟されているパチンコ・パチスロ産業21世紀会において、決議が行われ、具体的な数値目標を示して遊技機の計画的な撤去を行うほか、「特に高い射幸性を有すると区分した回胴式遊技機」についてはこれまで通りの満了日までに撤去することとされました。また、その取組の実効性を担保するため、ぱちんこ営業者に決議を遵守する旨の誓約書の提出を求めるとともに、入替の進捗状況を「見える化」するための「新旧遊技機設置比率明細書」を担当警察署に提出することとされました。ぱちんこ営業者、遊技機製造業者、販売会社等の各団体が一致団結して旧規則機の撤去に向けた新たな取組を行うことを高く評価するとともに、今後の状況をよく見させていただきたいと思います。警察においても、この明細書を参照し、各営業所における旧規則機の撤去状況を随時確認するとともに、必要に応じて助言を行うこととしていますが、業界において、この取組を始めとして、旧規則機の設置台数を計画的に着実に減少させるために有効な方策が確実に実施されることを強く期待しています。

 新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、各都道府県知事から休業要請が行われる中で、一部の営業所が営業し、店の前に行列ができたり、多くの客が押し寄せたりしたことが報道等で大きく取り上げられました。
 他方で、この間、貴協会や全日遊連、多くの県遊協においては、幹部が強いリーダーシップを発揮し、休業に向けた説得を粘り強く行うなどしていました。また、貴協会の加盟企業を含む複数の企業が、緊急事態宣言や休業要請が出されていない段階から、感染拡大防止という社会的要請を敏感に感じ取り、自発的に臨時休業を始め、そのような動きが貴協会内でも広がったと承知しています。こうした多くの方々の社会的責任に対する率先的かつ真摯な対応について、改めて敬意を表したいと思います。

 ただ、全国のほとんどのぱちんこ店が休業をする一方で、一部の営業所が知事の要請に応じず、指示処分を受けるまでに至る中で、国民のぱちんこに対するマイナスのイメージが形成され、また、ぱちんこへののめり込み・依存問題が注目されるようになったことは否定できず、今後、業界としてはこれまで以上の取組が求められます。

 依存問題に関しては、昨年12月に「パチンコ依存問題対策基本要綱」及び「パチンコ・パチスロ産業依存問題対策要綱」が、本年3月には同要綱に基づく「パチンコ店における依存問題対策ガイドライン」と付属マニュアル等が、それぞれ制定・公表されました。貴協会におかれましても、これらの要綱等の制定に尽力されましたが、引き続き、これらに基づき、依存防止対策に取り組んでいただきたいと思います。
 その個別の内容の一つ一つについては、本日は言及しませんが、皆様には、今一度、ぱちんこには、人を引き付ける大きな力を持っていること、それ故、人によっては、遊技が過度になってしまい、負債、家庭問題等に至ることがあることに思いを致していただきたい。そして、適法(セーフ)か違法(アウト)かといった次元を越え、より一歩進んだ次元で、ぱちんこが潜在的に持つ負の側面を生じさせないよう真摯に向き合っていただくことをお願いします。
 具体的には、射幸性の抑制、客と遊技の距離感に関する啓発等といった一般的な対策のほか、のめり込んでしまった本人あるいは家族が助けを求めてきたときには、確実にアクセスを制御する「自己申告・家族申告プログラム」の実践とその実効性担保を図っていただきたいと思います。本人の同意のない家族申告による入店制限の導入については、貴協会が尽力され、先般開始されたと聞いていますが、各営業所において、切実な家族からの願いに対し誠意をもった対応がなされるよう、更なる普及・充実をお願いします。
 自己申告・家族申告プログラムの運用に当たっては、顔認証システムの活用に係るモデル事業を実施している大手ホール経営企業があるほか、貴協会では、「顔認証等個人認証システムの活用に係るモデル事業勉強会」を立ち上げたと承知しています。また、貴協会の会員である複数ホール経営者が、現在設置しているATMを順次撤去していくこととしたと聞いています。
 このように、他の事業者や団体に先んじ、業界のモデルとなる取組をしていることを大変心強く思っており、これからも、このような形で業界をリードしていただけるよう大いに期待しています。

 貴協会におかれましては、引き続き、業界唯一の横断的組織であることの特長をいかし、各種の効果的な取組を一層推進されるよう期待しています。

 結びに、貴協会のますますの御発展と皆様方の御健勝、御多幸を祈念いたしまして、私の話を終わらせていただきます。