一般社団法人 日本遊技関連事業協会(庄司孝輝会長)は6月18日、ハイアットリージェンシー東京において、第30回通常総会を開催。途中、午後5時に山田好孝課長が来場、総会を中断して山田課長による講話(約25分間)が行われた。依存防止対策を最優先課題としたなお一層の健全化を要請した。
(1)ぱちんこへの依存防止対策(ギャンブル等依存症対策推進基本計画)
自己申告・家族申告プログラム、18歳未満の入場規制、ATM等の撤去等、出玉規制を強化した新規則機の普及、依存対策の調査、啓発週間の取組
(2)射幸性の抑制に向けた取り組み
(3)検定機と性能が異なる遊技機の問題
(4)遊技機の不正改造の絶無
(5)遊技機の流通における業務の健全化について
(6)ぱちんこ営業の賞品に関する問題について3点(賞品買取事犯について、賞品の取りそろえの充実について、適切な賞品提供の徹底について)
(7)広告・宣伝等の健全化の徹底について
ただいま御紹介にあずかりました警察庁保安課長の山田でございます。
皆様方には、平素から警察行政の各般にわたりまして、深い御理解と御協力を賜っているところであり、この場をお借りして御礼申し上げます。
ぱちんこ業界の皆様におかれましては、東日本大震災や熊本地震の発生以来、継続して取り組まれている復興支援活動をはじめ、昨年は、西日本での豪雨災害における被災地支援活動に取り組まれたほか、北海道胆振東部地震に伴う電力不足による節電要請につきましても、迅速かつ真摯に対応していただいたと承知しています。加えて、低炭素社会実行計画に基づく節電・省エネルギー対策等の社会貢献活動にも積極的に取り組まれていることに対しましても、改めて敬意を表する次第であります。
さて、ぱちんこは、我が国の代表的な娯楽産業として親しまれておりますが、依然として、ぱちんこへの依存問題のほか、遊技機の不正改造事犯、賞品買取事犯、違法な広告宣伝等が後を絶たず、健全化を阻害する要因がいまだ多く存在することも事実であります。
貴協会を始め、業界の皆様におかれましては、業界が置かれている厳しい現状について危機意識を共有していただき、適切かつ着実に取組を進めていただきたいと思います。
さて、本日はお時間をいただきましたので、業界の健全化を推進する上で特に必要であると考えていることを何点かお話をさせていただきます。
最初に、ぱちんこへの依存防止対策についてお話しします。
ぱちんこを含むギャンブル等への依存問題については、ギャンブル等依存症対策基本法が昨年10月に施行され、本年4月には基本法に基づきギャンブル等依存症対策推進基本計画が閣議決定されました。
この基本法においては、ギャンブル等依存症対策に係る国、地方公共団体、そしてぱちんこ営業者を含む関係事業者等の責務が明らかにされたところであり、関係事業者がその事業活動を行うに当たっては、ギャンブル等依存症の発症、進行及び再発の防止に配慮するよう努めなければならないとされたところであります。
このような責務を前提として、基本計画では、ぱちんこ業界が自主的に取り組むべき対策が定められました。
具体的には、
・広告宣伝に関する全国的な指針の策定
・ぱちんこへの依存問題の発生の抑止につながる知識の普及啓発の推進
・自己申告プログラムの周知徹底、本人同意のない家族申告による入店制限の導入等の推進
・18歳未満の可能性があると認められる者に対する身分証明書による年齢確認の原則化
・ぱちんこ営業所の ATM 及びデビットカードシステムの撤去等の推進
・出玉規制を強化した新規則機の普及の推進
・自助グループをはじめとする民間団体等に対する経済的支援
・安心パチンコ・パチスロアドバイザーによる依存防止対策の強化
・一般社団法人遊技産業健全化推進機構による依存防止対策の立入検査
等の取組が掲げられているところです。
そして、基本計画では、「基本計画に定める施策の目標については、適時に、その達成状況を調査し、基本計画の進捗状況を把握して対策の効果の評価を行う」こととされています。
したがって、ぱちんこ営業者が依存防止に係る責務を負う中で、各種依存防止対策が実行に移されるかが、業界として問われることとなるわけです。この点に十分留意いただき、以下、いくつかの取組について更に申し上げたいと思います。
まず、自己申告・家族申告プログラムについては、現在約2,300店舗が導入していると承知しております。しかしながら、同プログラムの実効性を担保するためには、導入店舗数をより一層拡大することが重要です。一部大手のホール経営企業においては、全店舗へ同プログラムを導入するなど、導入店舗数拡大の動きは進んできているものとは承知しておりますが、同プログラムの導入の有無が各営業所における依存防止対策への取組姿勢を判断するメルクマールの一つとなり得ることを認識し、貴協会におかれましては、同プログラムの更なる普及を図っていただきたいと思います。加えて、現在、貴協会が中心となって検討を進めていただいている、本人の同意のない家族申告による入店制限について、本年度中に導入することとされておりますが、その制度設計の検討に当たりましても、家族が申告しやすいものとするなど、制度導入後にしっかりと機能するよう留意していただきたいと思います。
また、18歳未満の者の営業所への立ち入らせについては、基本計画において、「ぱちんこ業界は、平成31年度中に、18歳未満の可能性があると認められる者に対する身分証明書による年齢確認を原則化」することとなっています。こうした取組が行われなかったために、客として18歳未満の者を立ち入らせた事実が認知された場合には適切な取締りを行う必要があるものと考えています。改めて、取組に遺漏のないようにお願いします。
次に、営業所のATM等の撤去等についてです。ATM 等については、その設置が民間事業者間の契約関係に基づき行われているという現状に留意する必要があり、ギャンブル等依存症対策推進関係者会議においても、業界関係者から「法的に、事業者と事業者で契約をしているということ自体で、ATMの撤去は非常に難しい」との発言がされておりますが、その一方で、同会議においては、ATM等に利用限度額が設定されているとの説明がなされても、なお、複数の委員から ATMを撤去してもらいたい、具体的には「関係が無いから無くしませんということにはならないと期待しております。」、「どうしても、ぱちんこをやっている状況の中でそこに設置されていると非常にお金を使いやすくなると、外からはそのように思えますので、やはり社会の理解を得るということも含めて、業界の中で啓発をしていっていただきたいと思います。」、「やはりATMは撤去していただきたい。」、「依存症の方々を救うという面から言いますと、事業者の利益や利便性のためにその方々を踏み台にしてまで設置しておく必要はないのではないかと思います。なので ATMの撤去の件も実効性ある検討をしていただきたいと思います。」といった発言がなされております。こうした関係者会議での議論をも踏まえ、業界として基本計画に基づく取組を推進するようお願いします。
次に、出玉規制を強化した新規則機の普及については、昨年2月に施行された改正規則に基づき、出玉規制に係る旧基準の遊技機の経過措置が終了する令和3年春までに、全ての遊技機を新基準に適合するものに入れ替える必要があるところですが、そのことが改めて基本計画にも盛り込まれているところです。業界におかれましては、全日本遊技事業協同組合連合会がいわゆる旧規則機のの撤去を業界全体として推進するための取組を決議したところですが、引き続き、計画的に旧規則機の撤去等を進めていただきますよう、よろしくお願いします。
さて、そもそもギャンブル等依存症対策の目標は、ギャンブル等依存症により不幸な状況に陥る人をなくし、健全な社会を構築することであり、対策の実効性を最大限に確保するため、徹底したPDCAサイクルにより計画的な取組を推進することが重要であるとされております。そこで、今般新たに行われることになる一般社団法人遊技産業健全化推進機構による依存防止対策の実施状況調査等を通じて、各ぱちんこ営業所における取組の実施状況について、PDCAサイクルの中で的確に把握し、適宜改善を促進してもらいたいと思います。
また、基本計画には、警察が行うべき取組も記載されております。それは、ぱちんこ営業所に対する立入り等を通じて、依存防止対策に係る措置が適切にとられているかの確認を随時行うこととしておりますので、御承知おき願います。
さらに、基本法においては、毎年5月14日から同月20日までをギャンブル等依存症問題啓発週間と位置づけているところ、本年は初日の5月14日に「パチンコ・パチスロ依存問題フォーラム」が開催され、多くの方が参加されたと承知しています。また、期間中における啓発等についても、ポスターやリーフレットの配布のほか、ウェブサイト等も活用して積極的に取り組んでいただいたものと承知しています。来年以降も引き続き、ギャンブル等依存症問題に関する関心と理解を深めるという啓発週間の趣旨にふさわしい取組がなされるようお願いいたします。
以上、ぱちんこへの依存問題への対策についてお話ししてきましたが、4月に開催されたギャンブル等依存症対策推進本部幹事会の場で、議長である官房副長官より「特に、基本法の附帯決議において、関係事業者に対し依存症の予防等に可能な限り配意するよう求めていることを踏まえ、広告・宣伝に関する全国的な指針の策定やアクセス制限の強化といった関係事業者における取組をしっかりと実行に移していただきたい。」との発言がありました。皆様の業界としての取組が注目されていることを強く認識していただき、業界全体で基本計画に掲げられた各施策について真摯に対応していただきたいと思います。
次に、射幸性の抑制に向けた取組についてお話しします。
射幸性の抑制に向けた取組として、業界を挙げて、新基準に該当しない遊技機の撤去に努められた結果、平成29年12月を期限に定められていた削減目標値については、営業所全体としてはその目標を達成されたとのことですが、その後、昨年4月、全日本遊技事業協同組合連合会においては、「特に高い射幸性を有すると区分した回胴式遊技機」の設置比率を本年1月31日までに15%以下とする削減目標を定められていたところ、その期限が延期されたと承知しております。
ぱちんこへの依存問題等により、ぱちんこ業界に対し、国民から厳しい視線が向けられる中、自主的に決定した削減目標が着実に達成されるよう、業界全体として真摯な取組を進められることを期待しています。
次に、検定機と性能が異なる遊技機の問題についてお話しします。
誠に残念なことですが、営業所において遊技くぎを曲げて検定機と異なる性能を創出する事案は、いまだに継続して発生しております。これまでにも、そのような事案は射幸性の適正管理を侵害する悪質な不正改造事案であると申し上げているところ、それでもなお行われるくぎ曲げについては、とりわけ厳しく取締り等を行う必要があると考えています。
貴協会におかれましては、業界全体をリードして、こうした問題の絶無に向けて積極的に尽力されることを期待いたします。
次に、遊技機の不正改造の絶無についてお話しします。
近年の不正改造の手口を見ると、不正改造された主基板に他の遊技機から取り出した主基板ケースやかしめを組み合わせることで、主基板ケースやかしめに不正改造の痕跡を残さず、外見上不正改造の発見を難しくしたとみられる事案、不正改造した遊技機の設置場所が変わっても当該遊技機の位置を特定するためにGPSを付加するといった事案、払い出される遊技メダルを不正に増加させるため、払出しに係る信号を誤認識させる不正な基板を主基板に取り付けたとみられる事案が発生しているなど、ますます悪質巧妙化しています。このように悪質巧妙化している不正改造に対処するため、ぱちんこ営業者、遊技機製造業者という垣根を取り払い、事案の情報共有や有効な防止対策を業界全体で模索し、効果的な施策をより一層推進していただきたいと思います。