大阪IR推進局 セミナーにて大阪商業大学・谷岡学長が講演

大阪府・大阪市のIR推進局は7月3日、大阪市阿倍野区の大阪市立大学医学部医学情報センターにおいて、今年度第2回目となる「知る、分かる、考える、統合型リゾート(IR)セミナー」を開催した。

大阪府・市では夢洲地区へのIR誘致に向けた取組みを進めており、セミナーは府民の理解を深める主旨で行なわれている。今回は大阪商業大学学長であり、大阪府・大阪市IR推進会議座長代理を務める谷岡一郎氏が講演を行なった。2016年12月、カジノを含む複合型国際観光拠点を整備するIR推進法の成立を受け、昨年4月に大阪府・市が共同でIR推進局を設置。現在、法整備の動きと連動して構想案を作成すべく、関係有識者の意見を聞きながら詳細な内容をまとめている所だ。

セミナーの冒頭、挨拶に立ったIR推進局の金森佳津理事は、特定複合観光施設区域整備法案の概要について改めて説明。事業者の資格と依存症対策についてそれぞれポイントを述べた。事業者は廉直さを求めるべく、世界最高水準の免許制によって選定される。不適切な事業者が介入できないよう厳格な規定が設けられるとともに、免許は3年の有効期限による更新制をとり、常に適正な運営を求められる事になる。

依存症対策に関してはシンガポールやラスベガス、マカオといった先進的に運営している国と地域の対策をモデルに、内国人はマイナンバーによる厳正な本人確認によって入場回数制限が敷かれる。また、安易な入場を制限する為、6000円の入場料を必要とすると共に、事業者には広告規制や従業員教育によって依存防止措置等を整備した上での許可申請を求める。カジノ法案は現在、衆議院を通過し参議院内閣委員会にて審議される予定。与党は今国会での成立を目標としており、IR推進局では成立すれば速やかに誘致活動を行えるよう準備を進めてきた。今年度も引き続きセミナーを開き、府・市民の意見を汲み取り、情報提供を行なっていく。

谷岡氏はラスベガスを中心としたIRのあり方について講義。まずは各国のカジノを取り巻く環境について現況を説明した。その中で、懸念されている治安情勢について谷岡氏は、シンガポールのIR「マリーナベイ・サンズ」のケースを引き合いに出し、カジノ開設に伴い、治安の悪化を懸念する声が多いが、実際はその反対で、殊マリーナベイ・サンズにおいては安全な区域が広がり、現在、研究においても確定的になっていると述べた。

依存症対策において、オーストラリアの「クラウンカジノ」では、ギャンブル依存に関する相談センターの開設をはじめ、7ヶ国語のパンフレットを常備し、更に各宗教の教義を理解した専門の相談員を配置するなど古くから熱心に取り組んできたと紹介。一方、韓国の内国人向けカジノ「カンウォンランド」では、過去に依存症対策を行なわぬまま開設し、自殺者の多発や治安悪化を招いたが、現在においては各種対策によって依存症対策の先進国にまでなったと語った。

谷岡氏はIRの役割を端的に、カジノを中核としてホテルやMICE、ショッピングモール、テーマパークなどの周辺施設を充実させ「人とカネ」を回すことだと説明。世界のIRを見ると、カジノの収益割合に依存しているIRも存在するが、例えばラスベガスなどはカジノ以外のノンゲーミング収益の割合が高い。総合的なエンタテインメントの提供によって老若男女がそれぞれIRの中で自分の楽しみたいコンテンツを見つけ楽しむ事こそが21世紀の観光だと語る。
「大阪は戦後70%の新しい産業をスタートしてきた場所。なんとか先陣を切って新しい産業にチャレンジしてほしい」と谷岡氏。大阪でのIR実現に期待を寄せた。