全日本遊技事業協同組合連合会(阿部泰久理事長)は5月23日、熊本地震による被災状況に関する熊本県遊協からの報告資料を公表した。「熊本地震による被災状況」と題して熊本遊協が5月9日までにまとめ、5月20日全日遊連全国理事会で報告したもの。
報告書では、平成28年4月14日午後9時26分、マグニチュード6.5震度7の前震、更に、僅か2日後の16日午前1時25分、マグニチュード7.3震度7の本震という2度にわたる観測史上初の激震に襲われ、多数のホールが被災。予想だにしなかった大きな被害に遭った。特に、2回目の本震は、不意を突かれた形であったが、幸いにして発生時間帯が営業時間外の深夜であったため、人的な被害は回避された。「しかしながら営業時間中であったならば、大惨事となり最悪の事態を招いていたものと推定されます」としてその状況をまとめた。
組合員店舗の被災状況まとめでは、県下148店舗中91店舗が被災。営業再開までの日数では、5日以内44店舗、6〜14日以内22店舗、15〜30日以内2店舗、未定23店舗。その中「未定23店舗」の内訳では、天井崩壊12店舗、島設備倒壊13店舗、外壁崩落・柱亀裂14店舗、スプリンクラー損壊による浸水3店舗、駐車場亀裂・陥没等5店舗と、複合した被害の状況が報告された。中でも、再開の目途の立たない理由として、「天井崩壊のほとんどは吊り天井であり、多数の照明器具や空調設備等も固定されていた。落下した天井が島設備を直撃したことにより、被害の拡大につながり、早期復旧は困難となった」としている。なお、営業再開未定ホールの遊技機総設置台数1万3717台(平均596.4台)。休業中による経済的損失、被災ホールの修復再建額等については見当がつかない状況という。
地震保険の加入状況では、過去に大きな地震が発生していなかったこともあり、ほとんどのホールが地震保険に未加入の状況。パチンコホールは、火災保険上、一般物件に区分され、火災保険契約時に地震保険を契約するか否か選択することになり、建物の査定額の半額が補償され、什器設備も対象となる。
【6点の教訓】
(1)吊り天井の見直し或いは耐震強度の強化
吊り天井の面積が広いほど落下する可能性があり、更に、付帯設備の重量で危険度が高くなる。700台や800台以上の大型店舗ほど見直しが必要。
(2)建物の構造設備の点検・補強
全体的な構造設備について点検し、不要な飾り付け、落下するおそれのある設備等の排除や設置個所の移動について要検討。特に大型ガラスについては、瞬時に破裂する可能性が強いことから、遊技客と近接した距離にあるガラスについては、強化ガラス等への変更を検討する必要がある。
(3)地震発生時を想定した避難誘導訓練の実施
開店前等を利用した避難誘導訓練により、地震発生時を想定した緊張感のある反復訓練が必要である。
(4)避難誘導時の妨げとなる設備・玉箱配置等の検討
遊技客は、地震発生と同時に一斉に出入口ドア方向に走り出すことから、通路は極力クリーンな状態を保ち、玉や玉箱等による転倒事故に配慮すべきである。
(5)出玉、カード等の保管
遊技客避難後は、カードや出玉が大量に放置された状態となるので、後日のトラブルを回避するため、半年間保管(出玉はレシートに換えて)することとした。
(6)地震保険加入の検討
売上の消滅或いは大幅な減収を強いられることになるので、備えあれば憂いなしで、地震保険加入について十分な検討が必要である。
なお、熊本県遊協は、この震災を教訓として、「がんばろう 熊本」を合言葉に復旧・復興に努め、より安心・安全な遊技空間の確立を目指していくという。