公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会(田中紀子代表)は5月18日、星陵会館(東京都千代田区)において依存問題啓発週間フォーラムを実施した。期間中、大阪ではIR誘致とギャンブル依存症についての現状と課題について5月15日(大阪市立青少年センター)に議論を深めていた。
今回の東京開催においては、「急増するオンラインギャンブル!依存症対策の現状と課題」について啓蒙・啓発の重要性を訴えた。併せて、オンライン委託を受けたアプリ開発業者、業務提携するネットバンクによる広告宣伝活動の活発化、後払い制度まである状況として、若年化への依存症拡大、規制の未整備など危惧されている状況とした。
第1部の基調講演では、山口県阿武町で臨時特別給付金4630万円を誤振込を受けた男性(24)がインターネットカジノで使ったというニュースが関心を集めている最中であり、時代の変化に伴ってギャンブル依存症も変化して、被害が加速している事への警鐘を鳴らした。
【第2部シンポジウム】(要旨・箇条書き)
超党派の「依存症対策議員連盟」は5月15日に発足し、会長には自民党・中谷元衆院議員、事務局長に福山哲郎参議院議員(立憲民主党)が就任。今回、中谷議員がシンポジウムに参加し、これまでアルコール問題議連としての活動だったが、コロナ禍で、アルコール摂取量の増加、ギャンブルやゲーム等への依存などの懸念が生じている事を踏まえて、活動の範囲を広げていく事を説明した。続いて、内閣官房ギャンブル等依存症対策推進本部の榎本芳人事務局参事官が参加。今年度より「ギャンブル等依存症対策推進基本計画」(第2版)がスタートしており、①社会状況の変化(ネット投票に対する依存対策)②包括的な支援の実現など理解を促した。
次に、考える会と都内2競輪場(東京オーヴァル京王閣、たちかわ競輪)とがギャンブル依存症の啓発事業をレース開催時に行うという初のコラボイベント(昨年12月と今年1月)が実現した事から、松波基成副主任兼事業係長(東京都十一市競輪事業組合業務課)と福家賢三事業課長(立川市公営競技事業部事業課)が報告した。
常岡俊昭医師(昭和大学付属烏山病院精神科)は、巣ごもり需要によるネット依存の診察者が2年間で急増している実情を報告。ネットは24時間いつでもどこでもできる事の危うさを伴うところから、予防教育や啓発への取組み強化を訴えた。
田中代表は、ギャンブル依存症の相談者で、大学以上に進学した者の3割が中退するデータなどから、若年層のネット侵食が見られると問題視。未来のある若者の可能性を奪い、働き盛りや子育て世代の依存問題は、子どもを含めた家族全体を巻き込んだ問題にも波及しているとした。「見ていくとネットを使って、若者をカモにしようという仕組みがどんどん出てきているように感じます。日本のこれからを担っていく若者です。それを経済的にも精神的にもどんどん追い詰めいく社会(風潮)であってはならないと思います」と述べて啓蒙・啓発活動の一層の必要性を訴えた。