カジノ 「IR*ゲーミング学会14回大会」開催

IR*ゲーミング学会(谷岡一郎会長)は9月27日、第一ホテル東京において、第14回学術大会・総会を開催した。各地のIR誘致の関係者ら約400名が集まり、昨年12月にIR推進法案が成立して最初の学術大会となった。7月31日までに「特定複合観光施設区域整備推進会議取りまとめ〜『観光先進国』の実現に向けて〜」により立法化が進められている中での課題とギャンブル依存症対策など、多様なテーマで討議した。

また、夕刻の懇親会では、28日衆議院解散という日程の中、国際観光産業振興議員連盟(IR議連)の細田博之会長、岩屋毅幹事長、松原仁副会長、自民党の二階俊博幹事長、萩生田光一幹事長代行、西村康稔内閣官房副長官、茂木敏充経済再生担当大臣、遠山清彦議員(公明党IR実施法検討プロジェクトチーム座長)、馬場伸幸幹事長(日本維新の会)など来賓としてして出席(来賓出席予定リストより)した。

■大会・ゲーミング部会において、囲碁界初の七冠を達成した井山裕太棋聖の師匠・石井邦生九段、将棋界史上最年少14歳2か月プロ入り・29連勝達成した藤井聡太四段の師匠・杉本昌隆七段を迎えて「棋界における弟子の育成について」谷岡会長が聞き手となって秘訣やエピソードをたずねた。

■IR部会は、「日本におけるIRカジノ制度の法的・制度的設計の評価〜諸外国の制度設計に参画した有識者は日本の制度構築をどう評価するか〜」と題してネバダ州ラスベガス大学のアンソニー・カボット教授、ユージーン・クリスチアンセン氏(全米賭博依存症協議会諮問委員会委員・ネバダ大学レノ校 賭博商業ゲーミング研究所役員)が基調講演。「リーガル・ディベート:IRカジノの制度はどうあるべきか?〜推進会議の議論は適切か、課題は何か、日本の制度はどうあるべきか?〜」というテーマで、美原融副会長(IR推進会議委員)の司会で、カボット教授、クリスアンセン氏、丸太健太郎公認会計士(IR推進会議委員)、渡邊雅之弁護士(IR推進会議委員)によるパネルディスカッション。

政府の日本型IRの“取りまとめ”において、様々な意見や感想が述べられたが、その中の一つとして「取りまとめ案からは、IRのカジノは絶対に儲かるものという過去の20世紀的な前提に立っているようだ。カジノというビジネスモデルは、世界において急成長の産業では今はない。倒産するところもあり、競争は厳しさを増している。今後、アジア地域にIR(カジノ)ができれば、更に競争が激しくなる事は明白。こうした環境の中で、10年前のシンガポールモデルを手本にした日本型IRは、今後10年、20年先を見越し、世界的にも競争力のあるものができるかどうか、慎重に検討した方がよい」。IR推進会議委員の一人である丸太弁護士からは推進会議でのエピソードに触れ、「世界最高水準の規制(マイナンバーによる入場制限等)という面が打ち出された話し合いの中で、美原委員が『このままではカジノが死んでしまう』という言葉が印象に残っています」と述べ、マイナンバーカードの普及率(9.7%)を示し、「勝手な推測として2025年頃にはIRが出来るとしても、7年後にどれ位普及しているか予測がつかない」とギャンブル依存症に対する過剰な政策対応を危惧した。これについては、「重要な事は、エビデンス(立証)できないものはしない。普通の人に対して入場制限する事になると、IRに投資する額にも影響する。立証されてもいない事を規制に組み入れる事は止めた方がよい。ギャンブル依存症に効果があるのではないか?という想定ばかりの規制は危険だ。理に適った立証された政策を打ち出すため政府は調査実行すべき」という現実的な意見が強かった。また入場料という政府案でも、財源としてのとらえ方が強く感じられ、目的や理由を国民にハッキリ示さない行政発想を危惧した。カジノの納付金についても、「継続的に施設を刷新し、新奇性を失わないよう運営できる事が基本。また日本にしっかり投資していただくためには、魅力的な対象であり続けなければならない。国際競争力のある税率について財務省は当然心得ているだろう」とした。

■先頃、日本初となる本格的な調査がまとめられ関心を集めた「パチンコ・パチスロ遊技障害全国調査」(パチンコ依存問題研究会)についての基調発表(坂元章教授・お茶の水女子大学)。それを受け「政策デイベート:ギャンブル等依存症対策及び法制対応を考える〜ギャンブル等依存症の現状は?法制対応前の対応は?ギャンブル等依存症対策法及びIR実施法による法制対応のポイントは?政府・自治体・民間は何をすべきか?〜」と題して、佐々木一彰准教授(東洋大学)のファシリテーター、坂元教授、河本泰信精神科医、クリストファー・チェク・チェン・スーン博士(シンガポール国立大学)により、パネルディスカッションを行った。

最後に、谷岡一郎会長(大阪商業大学・学長)は学会を代表して謝意。「IR*ゲーミング学会は、2003年2月ギャンブリング*ゲーミング学会として設立、2013年9月1日より現在の名称になったが、今後も必要な研究をどんどん進めていきたい。特に最後のパチンコ依存問題研究会(日工組社会安全財団)のパチンコ・パチスロ遊技障害調査の発表は、本当の意味での“エビデンスがある”(科学的根拠)調査であると、今一度この研究会の方々に感謝しています」と述べた。

同時通訳も入ったパネルディスカッションの模様

谷岡会長

石井九段(左)と杉本七段